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鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之

産業保健(労働衛生)は、あらゆる職業に従事する人々の業務に起因する負傷・疾病・障害・死亡などの健康障害の発生を未然に防止することと、労働者の健康増進や快適な作業環境の構築することを目的としている。このことにより企業の生産性の向上がはかられ、業務の人間への適合と人間の業務への適応がはかられることが期待されている。

また、労働者の精神的・肉体的・社会的健康の増進からはじまり、作業環境管理、作業管理、健康管理のいわゆる労働衛生の三管理を総合的に実践することにより、今日的課題である過重労働の防止、メンタルヘルス対策など、心の安全・安心・人間関係の良好な体制づくりにまで対応するようになっている。

医学分野の労働衛生では、主にいわゆる職業病の原因と病態の解明を行うことによって疾病の予防体制を確立することを行っていましたが、いわゆる職業病などに関係した特殊健診よりも、生活習慣病に関する健康診断が多く実施されている。

また、山陰労災病院では、病院の開設当初から長い間、女性の労働を軽視していたこともあって、診療科に産婦人科を設置していなかったが、2013年に産婦人科が開設され、それに伴い小児科も開設され、総合病院として機能するようになった。

産業保健の範囲も、メンタルヘルス(心の健康)、パワーハラスメント(パワハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)の予防にまで拡大されているので、産業保健従事者は今までの活動の範囲を越えて活動したり対応する必要がある。

産業医や産業看護職そして衛生管理者などのあり方も労働と疾病という関係のみではなく、職業に従事する人間として労働者に対応し、生活全体(職場、家庭、社会生活)を考慮に入れた健康管理と指導が大切となっている。
その上、人口の高齢化に伴い労働者年齢が上昇したことにより、年齢に応じた労働者の身体機能を十分に考慮した作業の工夫と適性配置を実践しなくてはならなくなった。これらのことなど、急速に変化する労働者の状況に対応した支援を可能にする体制を実現しなくてはなりません。