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鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之

業務上疾病発生状況を見ると、「負傷に起因する疾病」が最も多く、その中で腰痛(災害性腰痛)が最も多い。その発生業種も多岐にわたり、社会福祉施 設(介護 職)、運輸交通業(自動車運転)、小売業(重荷運搬)、建設業(土木作業)等で多発しており、健康診断時でも自覚症状として訴えが多く、重要な相談内容の 一つです。

これを予防するために重量物取扱い作業の自動化、省力化や不自然な作業姿勢の禁止、そして作業後の整備・腰痛体操の実践がすすめられています。

これまでは、重激業務などは避けられない労働として「過重労働」の中でも重点的に労働衛生対策がとられていました(過去のことではなく今日でも重点的な課題であることには変わりはありません)。

しかし、最近では過重労働による健康障害防止対策の内容を見ると、時間外の長時間労働者(1週に40時間を超えて行う労働が、1ヶ月当たり100時間を超 え、疲労の蓄積が認められる者)について、疲労やストレスが重なると過労死につながるような脳・心臓疾患を発症する事に関連しているという医学的知見もあり、事業者に対して改善をはかるように対策がすすめられています。

過重労働すなわち重い荷物の人手による運搬、深夜労働、長距離運転、悪い 作業姿勢によって発症する健康障害も重要ですが、IT産業や新興大企業における「労働者の替りはいくらでもいる」として大量採用された若い労働者の作業態様に注目されています。若い労働者を大企業は支店の店長や役職に早くから登用し、役職ばかりで権限のない小規模店舗の店長への残業代不払いが問題となった、労働時間の長時間規制から除外して働かせる、いわゆる「名ばかり管理職」であったり、テクノストレスをおこさせたり、パワハラが行われるなど、いわゆるブラック企業が表面化して、心身症の予防、メンタヘルス対策が 過重労働対策の重要課題となっています。

産業保健の研修会のテーマに、「過重労働としての長時間労働者やストレスチェック制度の調査結果による高ストレス者の面接指導」を同時に取り上げているのは、両方とも面接指導の手順が類似していることにもあります。

過重労働などの様にそれぞれの労働衛生対策も年代を経て法律が変わったり、社会情勢の変化により内容とあり方が変わっていくことを認識しておくことが重要だと感じています。