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鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之

 

近年、産業保健の主要な課題が変化するなか、重要な役割を担う「産業医のあり方」が検討されています。
労働安全衛生法では、従業員が50人以上の事業場には、総括安全衛生管理者(業種・労働者数により設置が必要)、安全
管理者(同)、衛生管理者及び産業医などを選任することが定められています。
その中で、産業医として活動する者は、医師免許を有する者が医学に関する専門的知識に基づき、有害物を取扱う業務や夜間など
特殊な環境で作業に従事する労働者の健康管理、そして、いわゆる生活習慣病の予防のため労働者の相談にのったり、
就労環境の改善について必要な措置を事業主に指導します。
また、毎月1回以上の職場巡視(労働安全衛生規則の改正により、平成29年6月1日以降は、事業主から毎月1回以上産業医に
所定の情報が提供されている場合であって、事業者の同意がある場合には職場巡視の頻度を2ヶ月に1回とすることができるよう
になりました。)をしたり、最近では過重労働による健康障害の防止、メンタルヘルス対策、労働者の病気の治療と職業生活の両
立支援を行うなど、担う業務が増大しています。

さらに、衛生委員会に「産業医」として参加し、労働者の健康管理について専門的立場で説明したり、課題の提案などを行います。
そこで、産業医を法人の医師である代表者や病院の院長などが兼任している場合は、職務が適切に遂行しにくいことや労働者
の健康管理と人事などを含む事業経営上の利益が一致しない場合も想定されることから、これを禁止するため労働安全衛生規則
が改正され、平成29年4月1日から施行されることになりました。

労働安全衛生法が施行されるまでは、産業医の事業場での立場が明確でなく、かつ、事業主が産業医の依頼主となるため、適切
に勧告を行いにくい場合もありました。
しかし、労働安全衛生法に、産業医の立場は事業主と労働者の中間に位置し、中立的立場で衛生委員会で発言できるし、事業主
に勧告できるようになりました。また、労働安全衛生規則第14条第4項において、事業主は、産業医が勧告した内容を理由にして
産業医に対して、解任その他の不利益な取り扱いをしないようにしなければならないと産業医の立場が保護されたため、依頼主で
ある事業主に対しても、忖度なしに勧告できるなど産業医の職務が行い易くなりました。
よって、産業医は中立的立場で、労働者の健康管理にあたり、就労のあり方についても適切な判断をいたします。労働者は健全
で良好な作業環境で働くことは当たり前のことですので、もしも、職場や自身の身体に不都合が生じた場合には、産業医に相談して
下さい。

労働者不足の改善や健全な労働者を確保するため、メンタルヘルス不調の予防や病気の治療をしながら就労を継続することを
容易にするための事業場における「就労両立支援」などの種々の施策が始まりましたので、必要に応じて産業医を活用されること
を期待いたします。