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鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之

 

新年おめでとうございます。
今年も鳥取産業保健総合支援センターは県内の企業・行政機関等で働く労働者の健康管理の支援に努力してまいります。皆様の御協力、御理解をよろしくお願い申し上げます。

厚生労働省は労働関係7法に係る「働き方改革関連法案要綱」を提示し、来年4月1日(改正法成立時期により変更あり)を施行期日と見込み、「働き方改革」を提唱しています。今年はその主旨に沿って時間外労働の上限規制や非正規労働者の処遇改善等の改正を目指しています。
そもそもこれらの施策は20年以上も前から2025年問題として言われていたことで、最近急に起こった問題ではありません。その基本は少子高齢化による労働者不足と年金受給対象である65歳以上の人口が一気に増加することです。特に地方においては社会的人口流出の加速により急速に人口減少となっています。

産業の原動力である労働者がいなくなれば企業の廃業はやむなしとなり、新規起業や企業誘致は期待出来ません。この対応措置としてとられるのが在宅女性の企業での活用、退職後の高齢労働者の再雇用、発展途上国からの外国人労働者の受け入れ等です。
この措置については、将来的な労働者不足現象の懸念に対する予防政策として提起されたのではなく、問題が発生してから事後対策としてとりあげられたので、実践するにはかなり困難な条件を内在しています。
また、これらの労働者の増加は、今までの産業保健の基本となっている終身雇用制度が実質的に変化していることであり、健康管理対策を立てる上で多くの矛盾を惹起しています。

たとえば各種有害作業や危険作業に不慣れな労働者を従事させることにより、急性中毒や墜落・転落などの災害の発生、および、女性や高齢者などの比較的体力不足の労働者が荷物運搬などの過重な労働により健康を害することが起こります。
また、共同作業、連携作業の不慣れによるストレス、パワハラの発生、能力不足(理解困難)のため知的ストレスによる身体異常の発生などにより、従来の健康な労働者としての健康管理の考え方では不都合、不適切な対応が発生することとなります。
職場の労働衛生対策についても、従来行ってきた基本健診や生活習慣病対策などに加え、職場における救急医療、外国人労働者なども含めた労働者間のコミュニケーション不足、労働安全衛生法令上健康診断が義務付けされていない労働者の健康管理、特にメンタルヘルスなどへの対策の必要性が生じています。

一方で、人工知能やロボット、機械化の導入等による労働者のテクノストレス、疲労蓄積と対応不足がふえています。
これらを考え、毎年同じことを繰り返して行う基本健診を毎年受診すること、ストレスチェックを年1回行うことで労働者の健康と精神状態の変化のチェック、そして作業場のメンタル不調のモニターを実施することが必要です。

企業の健康経営の考え方が普及し、安全・安心な企業活動が更に前進する戌年になることを願っています。