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鳥取産業保健総合支援センター所長  能勢 隆之

 

私傷病等で休職又は休暇をとった労働者に対して、課題となっているのは職場復帰や復職の可否判定要領です。
事業主や産業医が復帰や復職可否の判断をするにあたっては、傷病の種類と復帰後どのような作業につかせることが出来るかによって決まると思われます。
傷病統計によると、業務上で発症する疾病で最も多いものは「負傷に起因する疾病」であります。これは外傷や骨折などで外科的な治療が実施されますので、外傷時に内蔵等の疾病がないかぎり、回復後は、もとの作業に復帰可能と判定することが比較的容易と考えられます。障害が残った場合は、作業内容に配慮が可能かどうかが課題となります。次に統計上多いのが「異常温度条件による疾病」で、その多くは「熱中症」ですが、それほどの重傷になっておらず、入院治療後の後遺症もなく適切な作業環境下であれば、復職復帰は可能です。

その他には、作業態様による職業疾病たとえば「職業性腰痛」などであれば予防対策指針があり、職場復帰することもこれらのマニュアルに沿って可能です。

最近話題となっている新型インフルエンザなどは、それにより時には死に至る(特に慢性呼吸器疾患、慢性心臓病、慢性腎臓病などの持病がある人)場合もあり、医師から感染労働者に自宅療養等が必要と診断されたら、事業主としては、同じ職場の労働者への感染を拡大させないためにも、出勤させることは適当ではなく、病気休暇(年次休暇)による対応が妥当と思います。
その場合の仕事への復帰ですが、ウイルス感染症は発熱などの症状がなくなっても感染力が続くこともあるため、熱が下がっても2日目までは外出自粛の目安とし、その後に出勤させるかどうかを判定するこが適切と思われます。

事業主には労働者が、その生命、身体等の安全を確保するために、必要な安全配慮義務があり、疾病や感染している労働者の休暇後の職場復帰の判定にあたっては、産業医の意見を参考に最善の措置をとる必要があります。主治医から治癒証明書や陰性になった証明書等の提出があれば復帰判定もし易いのですが、法律で指示されている感染症(結核・AIDS等)その他の疾病でも、証明書を提出してもらうことが難しい現状ですので、主治医からの治癒証明書等は期待出来ないことを知っておく必要があります。

がん、心臓病、糖尿病などのいわゆる生活習慣病による長期療養後の職場復帰については、「治療と職業生活の両立支援」をする就労支援事業がはじまり、治療中に復帰の可否についての判定を行うこととなりますが、個別性が強く、一様にはいかないことと、反対に疾病を憎悪させるおそれもあることなどを考慮する必要があります。

メンタル疾患の長期療養後の復職については、復職判定は主に症状の回復状況により評価され判定されます。主治医は復職可能としますが、必ずしも職場環境を理解して判定しているとは限りませんし、業務遂行能力を復職後に担当する作業内容を分かった上で判定しているとは限りません。よって主治医の診断書のみで職場復帰の可否判定をすることは避けた方が良いと思います。
あらかじめ復帰判定委員会を設置しておき、リハビリ出勤制度をつくるなど復帰支援プランを策定しておくのが良いと思います。復帰復職判定は復帰後憎悪することもあるので、あらかじめ復職ケア体制を設置しておくことが必要です。