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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和5年3月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

世界終末時計

 

世界終末時計は、アメリカ合衆国の雑誌『原子力科学者会報』 の1947年から掲載されているが表紙絵の時計である。核戦争などによる人類の絶滅を『午前0時』とし、その終末までの残り時間を「0時まであと何分」という形で象徴的に示している。2023年1月24日(火)(米国時間),2023年の終末時計が発表された。原子力科学者会報では終末までの残り時間を「1分40秒」から「1分30秒」に改められた。過去76年間で最も破滅に近づいたことになる。最近の世界終末時計では、核問題だけでなく地球温暖化などの地球環境破壊も加味されているようだ。

1949年ソビエト連邦が核実験に成功し、核兵器の開発競争が始まったことで世界終末時計は3分前となり、1953年アメリカ合衆国とソ連が水爆実験に成功したときに世界終末時計は2分前と一気に時間は進んだ。1953年の水爆実験は社会に衝撃を与えたようで、水爆実験で蘇った怪獣がニューヨークの街を破壊していくという特撮怪獣映画『原子怪獣現わる』がアメリカで公開され、日本では放射線を吐き散らしてあらゆるものを破壊する『ゴジラ』が公開され大ヒットした。怪獣ゴジラは人間にとっての恐怖の対象、「核の落とし子」として描かれた。このような核問題を扱った映画が次々と制作・公開されヒットした。
私が記憶しているのは猿が支配する惑星が実は核戦争後の地球だったいう衝撃的なラストシーンで有名な「猿の惑星」(1968年)である。中学1年生の時、友達といっしょに観に行った。精密な猿のメイキャップが話題となったSF娯楽大作で、十分に楽しめた。劇中の知的な研究職(人間の研究をしているらしい)のメス猿が「私たちにくらべて人間は野蛮で、知能が低いのよ。」と語っている場面は今も鮮明に記憶している。

世界終末時計が最も戻ったのは1991年、米ソが第一次戦略兵器削減条約(START1  Strategic Arms Reduction Talks)に調印した時で、17分前まで戻ったようだ。残念ながら、その後時計は進みつつけている。現在、ウクライナ侵攻を背景にロシアと米国との新STARTは停止状態となっており、残り時間は「1分30秒」となった。