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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 平成30年9月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

国は平成25年度より9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置づけて定期健康診断の普及に努めており、本年度から始まる「第13次労働災害防止計画(第13次防)」の重点事項のなかに、法定の健康診断実施後に、産業医などの医師からの意見聴取や適切な事後措置を実施することを加えています。
これまで、労働災害防止のためには、危害防止基準の確立、責任体制の明確化および自主的活動の推進が重要で、必要な措置を講ずるように言われてきました。
加えて、産業保健の3管理のひとつである「健康管理」は他の「作業環境管理」・「作業管理」と併せて重要なこととされてきました。
健康管理のうち健康診断については、適切な事後措置を行うことで健全な労働環境の構築につながります。
各種の健康診断のうち、医学的に基本的な項目について実施される定期健康診断については、事業主として労働者が元気で働くことにより最大の労働力の提供と生産性が上がることを目指して、担当者を配置し労働者の健康の向上を図る対策を行い健康経営の目標を達成するために企業負担で行っています。
健全な労働力を発揮してもらうためには、作業によって起こる身体影響だけではなく、当然、労働作業以外の生活においても体調の不調をきたすことはありますので、主な生活習慣病(がん、心臓病、脳卒中、糖尿病)等の医学的項目を健診項目に追加し、早期に異常な所見を発見し、改善することを進めたり、メンタルヘルス向上のためストレスチェックを行い、本人のメンタル不調に気づいてもらう対策(セルフケア)などが行われています。

一般的に健康診断結果は次のような判定区分で報告されており、適切な措置をとる必要があります。判定区分の内容について解説いたします。

A:【正常範囲】(通常、正常とか異常なしと記載されることが多い)
実施した検査項目において当日又は後日分かった数値が、一般的に正常又は異常なしとされている基準値の範囲内にあることを示しています。ただし健診項目は受診時間や経費のこともあり、制限があります。それぞれの受診者に必要な検査項目を充分に網羅するわけではありませんので、身体のすべてに異常がないと判定しているわけではありません。

B:【観察不要】
数値が基準値をわずかに外れているものの、医師の診察も含め健康障害があるとは認められないので、特に措置の必要はなく、今まで通り仕事の継続に差しつかえなしとするものです。

C:【要観察】
基準値を少し外れた項目などについて、保健指導を受け、食生活に気をつけたり、運動をするなど、自己管理による生活改善に努め、関連する内容の異常に気付いたら早めに医師や保健師に相談する必要があります。

D:【要管理】
数値が基準値の範囲を外れ病気の発症が疑われたり、これ以上数値が悪くならないように産業医(医師)や保健師の指導を受け、医学的管理内容を含めて生活改善に努めることによって病気の発症予防に努める必要があります。

E:【要精査、要医療】
数値が基準値から大きく外れたり、画像診断で異常な所見が発見された場合に、もう一度、医療機関において再検査を受けたり、健診項目に追加して必要な検査を受け、異常がない場合はそのままで良いが病気が発見されれば引き続き治療を開始し、あるいは必要に応じて定期的に医師の管理を受けるものです。

これらのA~Eの判定区分の記載は多種ありますので、主な判定の趣旨を正しく理解して事後措置をとって下さい。

事後措置(安衛法66条の4)には以下のようなものがあります。
a)【通常勤務】 労働契約、採用条件に合わせた作業を継続して行う。
b)【就業制限】 勤務による負担を軽減するため、配置転換、労働時間短縮、就業場所の変更(屋外から屋内へ)等を行う。
c)【要  休  業】 療養のため休暇・休職させる。時には業務命令で行わせる場合もある

以上第13次防においては、これらの主旨のことが重点項目に挙げられていますので、少しでも参考になればと思っています。健康診断を受けて、企業全体で健全な経営に努めましょう。