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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和2年1月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

令和2年 新年あけましてお目出とうございます。
昨年は「働き方改革関連法」が施行され、少しずつ企業の現場で長時間労働の改善など見直しの成果があらわれています。
令和元年12月の所長のページにおいて、関連法の内容の一つである「産業医・産業保健機能の強化」についての理解を深めていただくため、まず「産業医の資格」について解説しました。また、今回の安衛法の改正では産業医に関する規定が整備され、事業者は産業医の業務内容を従業員に周知させる義務が設けられたこともお伝えしました。

引き続き今回は、「産業医の職務」について解説します。
労働安全衛生法第13条に常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、事業者は産業医を選任しなければならないと規定されています。また、労働者が1000人以上の労働者を使用する大規模事業場においては、事業者は「専属産業医」を選任する必要があります。常時50人以上999人以下の労働者を使用する中小規模事業場においては、いわゆる「嘱託産業医(常勤でなく非常勤の医師でも良い)」等を選任しなければなりません。
そして、労働者が50人未満の事業場(事業場単位であり企業単位ではないとされている)においては、医師等(必ずしも産業医資格がなくともよいとされている)に産業医の役割を担わせることを努力義務としています。

産業医は、労働者が健全に就労できるようにするため、次の項目のうちで、医学に関する専門的知識が必要な内容について事業者を支援することとなっています。

(1) 健康診断の実施(健診機関等に委託することができる)とその結果に基づく措置(産業医が労働者に面接して、結果の内容を説明したり保健指導などを行う)
(2)
長時間労働者(事業者などから情報を得る)に対する面接指導とその結果に基づく措置(長時間労働が健康状態に影響を与えているようであれば、労働時間管理を適切にするように指導する)
(3)
ストレスチェックによる高ストレス者への面接指導と措置(身体的なものか人間関係などによるストレスかを判断して指導する)
(4)
作業環境の維持管理(作業環境測定結果、有害物の個人ばく露量、有害環境要因の健康障害リスクなどの総合的な評価など)
(5)
作業管理(作業時間等を好ましい状態に保つことや有害作業については作業方法の改善や保護具の着用を指導する)
(6)
健康・衛生教育(インフルエンザ等の職場での感染予防対策や喫煙などの健康影響要因についての教育・指導など)
(7)
健康相談(労働者がかかえている身体的、あるいはメンタル不調などの健康問題の相談に応じ、必要であれば医療機関受診を勧める)
(8)
就労が関係すると思われる健康障害の原因調査及び再発防止のための措置

また、これらの活動に加えて12ヶ月の間に定期的な職場巡視を行うほか、事業場が開催する「衛生委員会」に委員として出席し、事業場での健康管理・作業管理・環境管理に関する事項や就労活動が健全に行われるように意見を述べることとなっています。
とくに今回の改正では「産業保健機能の強化」の内容に、事業主は産業医に長時間労働者など(時間外・休日労働時間が一ヶ月80時間を超えた労働者氏名、超過した時間に関する事柄等)の健康管理に必要な情報提供をしなければならないとされています。

次に産業医の権限として、事業者に対して労働者の健康管理等について勧告ができることとされています。
産業医は労働者の立場に立って、職場環境の改善・強化や労働者の健康に関することについて、事業者に勧告することが出来ますが、その場合にはあらかじめ事業者から勧告の内容についての意見を求めることとされています。そして、事業者は勧告内容については、遅滞なく衛生委員会に報告し、勧告内容や講じた措置の内容等を記録・保存しなければならなくなりました。

事業者および労働者の皆様は働き方改革の趣旨を理解し、産業医を十二分に活用して、今年も健全な就労生活を送れるように努めましょう。