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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和2年2月によせて

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鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

「働き方改革」が社会で実践され、少しずつ企業において定着しつつあります。

今回の改革は日本で今日までの伝統的に継続されてきた労働環境において、労働者の減少、雇用環境及び社会情勢の変化に応じて改善しなければならない点をとりあげています。
この改革は労働時間の短縮(残業規制)による生産性の低下、長い目で見る(経験による)人材確保と熟練作業者の養成が困難となることや、無期ではなく有期或いは短期雇用労働者の増加など、労働者の確保が難しくなる事や企業経営に影響を与えることが予想されますが、それを踏まえて事業主側に理解と改善を求める内容になっています。

この改革により労働者のライフプランにも影響を与えることになります。かつては日本の社会文化であった教育機関卒業後、その学歴をもとに「終身雇用」として一括採用され、採用後も年功序列で処遇されて昇進し、定年まで終身雇用され、退職後は年金で老後生活をゆったりと楽しむ生活設計が一般的でした。

しかし変化の著しい現代では、たとえば製造業において技術革新が進歩し、生産工程では流れ作業で製品が完成するようになり、一人一人の労働者は流れ作業の中で歯車として一部分の作業のみの単純作業を繰り返すこと等によりテクノストレスが発生し、いわゆる熟練労働者の存続が減少傾向になっています。
そして、IT革命により、単純作業は人間よりもロボットが正確に疲労しないで実行し、複雑な作業ですら人間より上手にこなせるようになり、現在では、人間はロボット作業の補助作業をする生産工程が進んでいます。

このことは、労働者の質を問わなくなり、十分な教育を受けていない外国人労働者を訓練もしないまま生産工程に従事することを可能にしています。
この傾向はさらに続行すると考えられ、「働き過ぎの防止」「ワークライフバランスの実践」「多様で柔軟な働き方の実現」を目指した改革だけでは、新たな問題・矛盾が発生することをあらかじめ危惧しておかなければなりません。

従来からの親方日の丸という日本古来の伝統的な企業モラルに対して、新自由主義が台頭したことによる成果主義の評価による人事考課の採用、熟練工養成よりもヘットハンティングによる既成の優秀な人材確保、IT技術、ロボット技術等を取り入れた生産工程の増加、生産の自動化など、人事管理や生産現場の改革に伴い、労働の質と労働者の働き方をも変化していますので、今までの労働時間をもとにした時間管理では不都合が生ずるので、労働時間法制のあり方を考え直す必要が出てきています。

産業保健分野においては、疲労しないロボットが生産の主体となり、それをサポートする人間の健康管理を新たに構築する時代を迎えています。