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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和3年1月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

新年あけましておめでとうございます。

新型コロナウイルス感染症は、1年以上を超えて流行の勢いが衰えません。流行の第3波は2020年12月末日まで拡大を続け、いつピークアウトするか、また第4波があるのかないのか予測がつきません。

新型コロナウイルス感染は北半球において夏期にも流行し、今までのインフルエンザなどのような気温、湿度などが影響する季節性ウイルス感染の流行とは様態が異なっています。また人の細胞への感染も特徴的であることが分かり、新型コロナウイルス感染は、コロナ突起を切断、融合して受け入れやすくする蛋白質(ACE2)を細胞表面にもつ嗅覚や味覚、肺・小腸・脳の細胞に侵入して感染することが明らかになってきました。そして仮説ではありますが、重症化には第3染色体(人は46本の染色体をもっており、大きい方から3番目の染色体)の中にある特定の遺伝子群(遺伝子は長いDNAのなかにある1種類の蛋白質をつくる情報をもった一部の塩基配列)が関係しているのではないかと言われています。この遺伝子群は、西欧の民族が受け継いでいて東アジア人には少ないため、欧米よりも日本人は重症化する者が少ないのではないかといわれています。

新型コロナウイルスはRNAウイルスで変異しやすい特徴があり、当初流行したウイルスの塩基配列とは異なるコロナウイルスになっているため、PCR検査の精度に影響を与えるようになっていることも推測されます。潜伏期が長いことなどにより陽性・陰性の判定に影響を与えますし、抗原検査では特異性が低いので精度が悪くなります。

そして、今海外でおこなわれているワクチンの開発は従来のワクチン開発とは異なり、遺伝子の断片を活用したワクチンと言われています。新ワクチンの感染予防効果がどの程度か、副反応がどれだけなのか、安全性がどうなのかが気になります。

今まで日本で開発、接種されている弱毒性ワクチンや生ワクチンは、開発に少なくとも数年を要します。接種後の副反応や障害の発生には数年の長期にわたる観察期間を要し、安全性を確認して使用されていますので、新しい技術で開発されたワクチンがどこまで信用できるのか気になります。当初より科学的(疫学的)流行予測がむずかしく、治療薬もなく、新型コロナウイルスに対する集団免疫(理論上は人口の約半数以上が抗体を保有する)が確立されることにより終息することが期待されました。

また不正確ではありますが、インフルエンザワクチンの接種は被接種者の免疫システムを鍛えて病原微生物(ウイルス、細菌など)による感染に免疫性を発揮する交差免疫ができることも期待されますので、これから同時流行する2つの感染症の予防のためにインフルエンザワクチンの接種をお勧めします。第3波がいつまで続くか分かりませんが、集団免疫ができるまでは、日常的にマスクを着用し、外出および移動の自粛と3密をさけて予防にこころがけましょう。