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鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之

昔からの言い伝えに「病(やまい)は気から」という名言があります。病気の発症にはいろいろなことがありますが、病気の原因には精神的なこともあり、特に異常(その人が耐えられないような)ストレスによって身体的異常が出てくることを言っています。
ストレスがたまった状態が続くと精神科関連の疾患に気分障害としてあらわれて「うつ病」とか「そううつ病」という病気になることがあります。
これは気分がうつ状態(抑うつ状態と同義語で、精神活動が抑えられて、のびのび出来ない状態)となり、気分が落ち込むことや気が滅入ることや、やる気が出ないなどが表現型として自覚したり或いは他人にも分かるようになります。

12月から実施される「スレトスチェック制度」は労働者が質問票に自分で記入し、自分のストレスの状態を知り、ストレスなどによる気分障害を起こさないように未然に対処することを目指しています。
抑うつ状態は仕事をしながらだけではなくて、家庭においても誰もがそれぞれのストレス要因によっておこります。これを「反応性うつ」と言って抑うつ状態を起こす前に 時間的に比較的近い時期にあった心理的現象に伴い、その影響によって反応として気分が落ち込むことなどがあります。失恋とか大学受験失敗などが典型的な例 です。
これらの事がたびたび重なったり、長い間要因として心にのしかかると精神疾患に移行していく場合があります。ストレス要因がなくなると改善したり短期的(約1~2週間)で回復すれば病的とは言えません。

産業保健分野で職業に起因しておこる疾病に化学的・物理的要因などによる疾病を取り上げてきましたが、メンタルヘルスが対策として重要であると取り入れられるようになり、やっと就業上の重要な課題として考えられるようになったということです。
今回のストレスチェックは、A.仕事のストレス要因(心理的負担に原因する項目)B.心身のストレス要因(心身の自覚症状に関する項目)C.周囲のサポート(職場での他の労働者の支援に関する項目)の3領域により構成されています。
この質問票によって医師などがストレスの程度を評価し、自覚症状の高い者や自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が悪い者を高ストレス者として選び出し医師などの面接指導によりメンタルヘルス不調を未然に防止すること(第一次予防)を目指します。
すでにメンタルヘルス不調の状態にある労働者も含まれている場合は、面接指導を行った医師(産業医等)が専門医への受診を勧奨して早期発見・早期対処(第二次予防)を考えています。これによって本人の就業をスムーズにすることと場合によっては適切な作業管理や労務管理の改善につながります。

産業保健の健康管理は仕事をすることによって発生する障害を予防することが目標ですので、ストレスチェックを正しく理解して労働者の健康管理と快適な作業環境を作られることを願っています。