アーカイブ | RSS |
所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和7年6月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

『職場における熱中症対策の義務化』

全国的に熱中症に気をつけなければならない季節となった。職域でも熱中症による労働災害が
重要な課題の一つとなっている。熱中症による休業4日以上の死傷者数は年間千人を超えている。
従来は製鉄工、硝子工、ボイラーマンなど特殊な高温環境の労働で発生していたが、近年、建
築業など戸外労働での熱中症の発生が多くなっている。職場の熱中症対策として、暑さ指標(W
BGT)に対応した作業時間の短縮や休憩の確保、定期的な水分や塩分の補給、通風や冷房などに
よる環境整備、身体の不調に応じた適切な処置(身体冷却や医療機関への救急搬送)を行う必要
がある(令和7年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱 厚生労働省)。

6月1日より、労働安全衛生規則が改正され、職場の熱中症対策が義務化された(労働安全衛生
規則の一部を改正する省令の施行等について (令和7年5月20日付け基発0520第6号))。過去3年
連続で死亡災害が30人を超え、減少傾向にないこと、さらに今後気候変動により死亡災害が急増
するのではないかという危機感が今回の改正の背景にある。現場において、死亡に至らせないた
めの適切な対策の実施が必須となり、今回の改正により「体制整備」、「手順作成」、「関係者への
周知」が義務化された。対策を怠った場合は、罰則(6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)
が科される場合もある。

過去3年間の死亡災害の要因分析によれば、初期症状の放置・対応の遅れが主な要因であるこ
とが判明している。熱中症のおそれのある労働者を早急に見つけるためには、作業者本人や周り
が異変を感じた場合の通報体制を確立することや職場巡視の徹底が必要とされる。単独作業作は
できるだけ避け、単独作業をせざるを得ない場合には、深部体温を検知して危険を知らせるウエ
ラブルデバイス等の活用も有効である。異常を発見した後の手順も定める必要がある。医療機関
へ搬送する必要があるかどうか判断するための基準を定め周知しなければならない。迷った場合
には躊躇なく緊急搬送するほうがよいとされる。一方、緊急搬送の必要のない軽症者への対応も
定めておく必要がある。また、救急搬送を待つ間、作業着を脱がせて水かけるなどの身体冷却処
置も周知しなければならない。体温が40℃をこえる重症の熱中症は、生命の危険が非常に高い状
態で、いかに早期に体温を下げるかが生命予後を決定するからです。

猛暑の夏が始まろうとしている。熱中症対策で死亡災害0を目指しましょう。