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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和8年1月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

『日本の家屋は寒い』

 

我が国の月別死亡統計によると、死亡率は冬季(12月〜3月頃)に高くなり、1月頃にピークを迎える傾向が強く、夏場には減少します。
この冬季の死亡増加は世界的にも見られる現象で、「冬季超過死」と呼ばれています。一般的には、血圧の上昇や心疾患・脳血管疾患
の悪化、インフルエンザなどの感染症の流行、呼吸器疾患の悪化などが要因と考えられています。この冬季の過剰死亡を防ぐことは、
公衆衛生学における重要な課題の一つです。

しかし、冬季の死亡増加率に関しては、興味深い現象も観察されています。寒冷地である北海道と比較して、本州以南の温暖な地域
の方が冬季の死亡増加率が高い傾向があるのです。欧州でも同様に、寒冷な北欧よりも温暖な南欧の方が冬の死亡増加率が高いとされ
ています。その理由の一つとして、冬の室温の違いが指摘されています。寒冷地では、断熱材や暖房設備が整っており、室内は常に暖
かく保たれています。一方、温暖な地域では防寒設備が十分ではなく、冬の家屋は比較的寒い状態にあります。冬季の室温と健康との
関係についてはさまざまな研究が行われており、2018年に世界保健機関(WHO)は「寒さによる健康への悪影響から住民を守るため、
室温を十分に高く保つことが重要である」と提言しました。温暖・寒冷いずれの気候の国においても、冬季の室温は18℃以上に保つこ
とが推奨されています。

ある調査によれば、この条件を満たす日本の住宅はわずか1割にすぎないという結果でした。日本の家屋は寒いのです。同調査による
と、在宅中の居間の平均室温は北海道が19.8℃で、全国でもっとも暖かく、最も寒かったのは私の郷里である香川県で、13.1℃でした。
瀬戸内であっても冬の朝は零度近くまで冷え込みます。冬の朝、寝床から這い出すには気合が必要でした。当時は「冬だから部屋が寒
いのは当たり前」と思っていました。

近年、寒くなると呼吸器系疾患で体調を崩すことが増えてきました。昨年末は暖房器具の故障もあり、例年になく部屋が寒く、その
せいか咳がひどく、年末年始の外出も控えることになりました。これからは室温18℃以上を目指してみようと思います。

 

*伊香賀俊治  住宅の温熱環境と高齢者の健康  応用老年学 第17巻第1号 2023.8