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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和5年7月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

「異次元の少子化対策」

 

ある世論調査では、政府の掲げる「異次元の少子化対策」に対して、働く女性の60%が期待しないと回答し、マスコミからは昭和的価値観に失望と評されている。
多くの先進国で少子化対策が課題となっている。その中で、スウェーデンの少子化対策は、成功例としてよく紹介される。1983年に合計特殊出生率が1.6まで低下した後、 様々な社会サービスを充実させて、 1990年代に合計特殊出生率が2.0を超えるまで回復した。1992年、私は振動障害の研究のためストックホルムに滞在してので、たくさんの乳母車が往来する状況を目の当たりにした。
男性の8割以上が利用する育児休業制度、16歳未満児まで支給され多子の割り増しもある所得制限のない児童手当、充実した乳幼児の保育サービス、小学校低学年の8 割以上が利用する学童保育などの社会サービスは世界的に知られている。
スウェーデンの少子化対策は、歴史的背景のあるジェンダー・家族政策が基盤にあり、男女機会均等に始まり、女性の結婚、妊娠、出産、育児に関する障壁からの解放に努めたことに特徴があると言われている。

世界経済フォーラムによる日本のジェンダーギャップ指数(「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示す指標)は、2023年0.647で146カ国中125位だった。先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国より低い結果となった。ちなみに、スウェーデンは5位である。

2006年の第1回は0.645で、115カ国中80位だったが、以降順位は下落し、過去最低となった。他国が格差解消の取り組みを進める一方、日本は取り残されている状況だ。また、日本は「経済」「政治」分野が極端に低いといわれている。少子化対策が最重要課題であり、待ったなしであることに異論はない。しかし、この順位で、「異次元の少子化対策」と称するはどうなのだろう。