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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和5年8月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

「日本人の平均寿命」

 

厚生労働省は7月28日、2022年の日本人の平均寿命を発表しました。日本人の平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳でした。2021年から男性は0.42歳、女性は0.49歳、男女ともに2年連続で短くなりました。前年からの下がり幅はいずれも過去最大となりました。2022年はオミクロン株が広がり、約4万7600人が死亡して平均寿命を押し下げたようです。ただ、国別の比較では、女性は1985年以来連続で世界1位、男性はスイス、スウェーデン、オーストラリアに次いで4位ですが、男女合わせると平均寿命が世界一長いことには変わりありません。

一方、平均寿命に関して、近いうちに日本はスペインなどの国々に追い抜かれるのではないかという予測があります。その要因として、日本人男性における、高血圧、糖尿病などの生活習慣病と深く関連する肥満の増加があげられています。国民栄養調査によると、Body Mass Index(BMI; 体重(kg)÷身長(m)÷身長 (m))が 25 以上の人を肥満と定義した場合、昭和55年から令和元年までに、日本人男性の肥満者の割合が20%弱から33%へと増加していました。この原因として、食生活の変化に加え、仕事の身体活動の低下や車への依存が推測されています。

さらに、子供の貧困の問題があります。子どもの貧困率は、1980年代から上昇傾向にあり、今日では実に7人に1人の子どもが貧困状態にあるとされ、OECD加盟国の中で最悪の水準です。ある調査によると、低収入世帯では朝食を食べていない子どもが、非低収入世帯に比べて1.8倍高いという結果がしめされています。また、インスタント食やコンビニ弁当ばかりの食事で栄養摂取の偏りがあるようです。「子ども時代の貧困は50年後の健康を損なう」と言われています。長寿国日本として、このような状況をそのままにしてよいはずはありません。