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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 平成31年2月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

人口減少に伴う労働人口の減少、高齢者の再雇用、女性の職場への進出促進など一億総活躍社会の実現に向けて政府主導の働き方改革関連法案が昨年可決成立し、平成31年4月1日から順次施行されることになっています。
これにより時間外労働の上限が制定されるほか、特に産業保健の強化や産業医の活動を支援する規則等が盛り込まれて、産業保健の充実とその実施の期待が高まるとともに、産業医の責任も大きくなりました。
振り返ってみると第二次世界大戦後の日本は敗戦後、復興を進めるとともに、それに続く高度経済成長が日本社会を今日のように世界的位置にのし上げてきたのです。

この発展を支えてきたのは島国であったという利点とともに、統一した国家体制がとられたことと自由と平等の社会的風潮により格差の少ない終身雇用制度を維持発展させ国民の安定した生活があったからです。また定年までの無期雇用、基本として1日8時間労働のフルタイム勤務、そして安定した企業に労働者が直接雇用されることにより生活が保障されていたことも一因です。これを前提に労働者は会社の為に一生懸命働き、ややもすると早朝・深夜の時間外や休日に勤務することも美徳とされ、労働することの成果はあまり問われないことで頑張って働いてきました。

近年、情報化社会が到来し、特に海外の情報が入手しやすくなり、国内での日常生活の価値観が様々な影響を受けております。流通体制の進歩により海外から安価な商品が輸入販売されることによる価格の不安定化、ネット通販などの生産者と消費者が直接つながる事による商品の購入体制の変化や国境を越えた取引など、グローバル化が進むことで日本的安定感と価値観の判断基準の変化を伴い、やがて国内の労働者の勤務体制にも変化をもたらしてきました。
無期雇用体制の正社員は、長時間の残業や長期の単身赴任生活などに加え、過酷な条件下で働かせられることになっていた傾向もありましたが、非正規労働者が増加することにより、職種・勤務地・労働時間が限定された勤務形態があらわれ、賃金はもとより職務・労働時間等の勤務態様の正規・非正規労働者間の矛盾が表面化してきました。

また同時に非正規労働者に対して正規労働者と同じ勤務内容や権限を課することも問題となってきています。
その他いろいろ表れてきた労働問題に対する課題を法改正によって解決していくことと、一人一人の労働者が健康で人間らしく継続して働ける労働環境を構築する産業保健の活動が重要であることに気づかされる今日です。