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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 平成31年3月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

季節性インフルエンザが流行して感染の拡大が心配されています。今年の冬は暖かいこともあり、3月には流行が収まることが予測されていますが季節の変わり目、気温の変化、花冷え等があり、少なくとも3月いっぱいは警戒を怠らないようにすることが大切です。そのため言い古されたことですが、蔓延予防として手洗い、咳エチケットとしてマスクの着用を皆が心がける必要があります。
その上であらかじめワクチン接種による感染・発症予防や感染しても軽症で経過させる努力も必要です。
今回の流行は主にA香港型のインフルエンザによるものと言われています。A型インフルエンザウィルスは抗原変異がワクチン株を培養する工程で生じやすく、流行しているウィルスと必ずしも接種ワクチンが完全に一致しにくいため、接種による予防効果が充分に期待出来ないと考えられています。

事業者(会社)は、感染して発症した労働者と高リスク者である妊婦や高齢労働者などの感染弱者との接触の機会を出来るだけ少なくすることが求められます。
まず職場では感染防止策について労働者へ正しい教育や普及啓発を行う必要があり、欠勤した労働者の感染の可能性を予知しておくことも大切です。

また、今回はワクチン接種による予防効果が薄いことも考えられますので、感染機会の多い医療従事者には、ワクチン接種のうえに抗インフルエンザ薬の予防投薬を進めます。

一般的な労働者については、発熱などで体調が悪くなった場合は仕事を休むのが原則ですので、感拡散予防のために休業出来る職場環境を整えておくことも必要です。
ところで、インフルエンザに感染して休んだ場合の休業手当の支払が問題となる場合があります。

インフルエンザを発症した労働者が、身体状況から仕事を遂行することが困難であると考え、また医師の判断指導などにより、自主的に休業した場合は「使用者の責に帰すべき理由」に該当しませんので、普通に欠勤した場合と同様に賃金を控除、又は賃金を支払わないことで対応が可能です。

しかし、インフルエンザの感染が確認された労働者が有給休暇を取得せず、また欠勤もしないで「働ける」と考え出勤してきた場合に、事業者(会社)は他の従業員などに感染が拡大する危険を回避するため休業してほしいと考えます。一般的にはインフルエンザを発症した場合は熱が下がり2日間、出来れば約1週間は休ませることが感染拡大防止には必要と言われています。

出勤する意思のある労働者を事業者(会社)の判断で休業させる場合には、インフルエンザは労働安全衛生法で定める「就業禁止」の対象とする疾病に該当しませんので、休業手当の支払いが必要となります。
休業手当を支払う場合でも、病気や症状によって危険負担が異なりますので、労働者が安心して休業できるよう、あらかじめ「病気休業の場合の手当」の割合(60%~100%など)等を検討しておくことが雇用管理の面からも必要ではないでしょうか。