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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和元年8月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

平成306月に労働基準法や労働安全衛生法などの労働関連法の改正と併せて、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(「働き方改革関連法」と略す)が成立し、平成307月に公布されました。

「働き方改革関連法」は、働く人が個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を自分で選択できる環境を社会や企業内に構築することを目指しています。
このことは産業保健の立場からも望ましいことと考えます。しかし、これを達成するためには、日本の企業の採用体制である終身雇用体制をどのようにするのか、などの阻害要因も改変する必要があります。現代では、新自由主義の考え方やグローバル化により、日本人が外国で採用されたり、日本国内で外資系企業に就業している場合もあり、有期雇用契約など海外の労働文化が取り入れられるようになりました。

労働を実績或いは結果のみで評価する成果主義が、日常的に企業の人事評価、賃金評価に採用されるようになりました。これは、自分の評価を良くしようと努める日本的文化、身を粉にして(粉骨砕身)会社のために働く親方日の丸の美徳精神に反し、日本的労働者が実績評価の労働環境の中で、「時間外労働の上限規制」や「年次有給休暇の確実な取得」等を自らを律して受け入れてくれるか疑問に思います。

一方、我々は貨幣経済の文化のなかで生活しています。貨幣を使って食物を得たり、生活を実践していますので、貨幣を得るために働かなければならないと考えています。しかし、ただお金を得るために仕方なしに仕事をする「いわゆる食うために働く」という労働者が多く存在するようになっているのではないかと心配しています。

働き方改革の推進のためには、人生改革なり労働者個人の生きがいの確立がなければ、改革の意義が見えてこないし、必要性が十分に理解できないと思います。

産業保健の立場からは、この改革により、まず労働者の健康維持確保が容易なることを期待しています。そのうえで、労使とも自然観、人生観、死生観などを持ち、改革の意義がそれぞれの労働者の人生に適合して達成されることを期待します。