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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和2年3月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大流行しています。
世界保健機関(WHO)の発表によると、パンデミック(世界的大流行)になる可能性を示唆しています。

平成11年に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法という)が策定され、日本国内の感染症対策が行われてきました。
わが国では1970年以降、エボラ出血熱などの新興感染症と近い将来克服されると考えられてきた結核、マラリア等の再興感染症が流行し、脅威を与えていることに加え、医学・医療の進歩、衛生水準の向上、人権尊重の考え方の普及、外国に工場を建設する等による日本企業の海外進出、そして、そこでの生産が活発となり、物や人の海外との交流が盛んになったことや観光事業のインバウンド化による外国人旅行者の増加など、今までとは異なる社会情勢に対応するため、感染症対策をその都度抜本的に見直し感染症法を改正してきました。

この度、令和221日から新型コロナウイルス感染症は指定感染症(既に感染症に指定されている13類の感染症に含まれてなく、13類感染症に準じた対応の必要性のある感染症を、政令で1年間を限定して指定すること。) として指定されましたが、コロナウイルスはRNAウイルスであるため、季節型インフルエンザとは表面の抗原が異なり変異しやすく、潜伏期が長いため感染経路が特定しにくく複雑です。

たとえPCR法で感染が陽性と判定されても、特効薬がないため、今までの患者隔離等の封じ込め対策では感染の拡大を止めることは困難です。
特に検疫感染症と同様に水際作戦を実施し、感染患者や疑患者の日本国内上陸を阻止することは、長い潜伏期間中の健康キャリアがいるためチェックが困難です。今回の大型クルーズ船の乗員・乗客の船内封じ込めは、対象者が多人数で検疫が困難である中、潜伏期間中や発症していない陰性者も多かったため、一週間以上の全員の船内隔離は無理なことが多かったと思います。

確認された感染者に対しては、医療機関に入院しても特効薬がないので、対症療法を行うことで経過をみながら治療を行うしかありません。また、今のPCR法では陰性と判定されてもコロナウイルスの保有の有無を判断することは困難ですので、今までの感染症対策の方法では対応が難しい面があります。今後、感染の流行を阻止するためには、一人一人が健康管理をする必要があります。とりあえず栄養・休養・そして免疫力が向上する適切な運動などの健康行動が必須です。

各企業においては、接触感染対策として、出社時を含め一日数回の手洗い、アルコール製剤による机等の拭き取り、手指衛生を徹底し、出勤時の満員電車を避けるための時差出勤、フレックスタイム制やテレワークの導入など会社としての取組みが必要です。また、飛沫感染対策としては、感染症状のある人・疑いのある人の出勤停止措置(有給扱いが望ましい)、社員全員がマスクを着用し、健康キャリアからの感染防止と自分の咳による他人への感染防止の対策を講ずることが重要であります。
空気感染対策(エアロゾル対策)は、空気中に浮遊する病原体を吸入することで起こる感染の予防方法ですが、これは個人の免疫をつけることしか予防方法がありません。新型ウイルスのため、まだ有効なワクチンは開発されていませんので、せめて、工場や事務所の排気を十分に行い、空気が停留する閉鎖空間で仕事をしないようにすることです。

いずれにしても、今回のコロナウイルス流行スタイルは過去の国内感染症の流行と異なる(前例がない)ため、各事業場に於いては産業医等から専門的知識を得て、適切な価値観を持ち、多様性のある(画一でない)対策をとられることが重要と思われます。