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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和2年4月によせて

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

世界保健機関(WHO=国連の保健衛生に関する専門機関として本部をジュネーブにおいて活動し、約200弱の加盟国がある。)が世界で流行している新型コロナウイルス感染症をパンデミック(世界的流行)として緊急事態宣言を出しています。これは新型感染症(一般的に国民が当該感染症に免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速に蔓延し生命、健康に重大な影響を与える感染症)であるため健康影響のみならず、人の移動制限や交通遮断そして経済活動の抑制が対策として必要となり、社会的影響が大きくなることを意味しています。各企業においても従業員の健康を守ることと同時に、経営の継続を可能にする対策をたてておかなくてはなりません。
そのためには事業者としても感染症対策の基礎的知識を理解し、労働者へは流行時だけではなく日頃より、健康づくりとして体力や抵抗力をつけておく等の指導や支援をしておくことが必要です。

一般的に病原微生物であるウイルスは、生体内(人間等の細胞内)で生存増殖します。コロナウイルスは『RNAウイルス』と言われ、変異しやすいことと、エンベロープという脂質の膜に覆われている強いウイルスではありますが、アルコールで容易にこの膜が破られてウイルスが死滅する性質も持ち合わせています。このような性質をもったウイルスは人間の細胞内に入って分裂・増殖を繰り返し、病原性を発生します。一般的に病原性は弱いので日和見感染とも言われますが、人から人へ伝搬を繰り返すと毒性がより強くなることもあります。
コロナウイルスは新種ですから人類に免疫力がないことと、感染後に発症するまでの潜伏期間が長く、咳や痰等の症状がなくても、レントゲンを撮ってみると肺炎の所見がみつかり、その後に発熱したり、呼吸困難をおこし、死の転帰に至る重篤な経緯をたどるやっかいな病原体です。

また、コロナウイルスは、夏期に入り気温が上昇し、雨期になり湿度が上がる頃には活動が低下するインフルエンザウイルス等とは異なり、エンベロープなどがあり、夏期を超えて生存し続けるのではないかと心配されています。

感染対策についてですが、このコロナウイルスは新発生したウイルスのため、未だ特効薬は開発途中にあり、感染源対策は困難で、現段階で撲滅は出来ません。

次に感染経路対策について、接触感染(感染源に接触する)対策としては、もちろん感染者に接触しないことが重要ですが、そのほかに病原体で汚染したタオル、器物等に触らないことが大切です。
飛沫感染対策は、感染者と至近距離で対話することや、感染者から排出された飛沫が空気中で浮遊しておりその粒子を吸入する、或いは眼などの粘膜に吸着する状況を避けることです。
感受性者対策は、個人個人が免疫力をつける方法がありますが、まだ抗体をつけるためのワクチンが開発されていません。当面開発困難なため、一般的な健康づくりとして行っている栄養・休養を十分とることと、運動をして体力をつけることが必要な対策となります。
感染症対策は感染者の流行の状況が明らかになってから確立することが多く、一般的には、治療方法がないか不充分なことが多いので、国民に集団免疫(全体の70%以上の人に抗体ができる状態)ができるまで耐えるしかありません。