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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和4年4月によせて 

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

新採用の労働者の皆さん、就職おめでとうございます。

鳥取産業保健総合支援センターは、産業保健に関する事業を実施する機関として設置されています。主な事業は、あらゆる職業に従事する労働者の肉体的・精神的および社会的健康を維持・増進することや労働に起因する健康障害の予防や健康に不利な条件で就業している労働者の保護などです。そして、これらに関係する業務を実施する事業者および産業医など産業保健関係者が行う産業保健活動の支援なども行っています。2019年4月より労働関連法が改正され、順次「働き方改革」が施行されていますが、折しも新型コロナウイルス感染症の影響もあり、改革の内容を逆手にとった現象が発生し、労働環境などに悪影響を与えています。

例えば「時間外労働の上限規制の導入」については、企業は新型コロナウイルス感染症の拡大の中でやむなく業務体制を縮小するため正規労働者の削減を図ったり、新規の採用を控えるようになりました。ポストコロナで仕事量が回復しても有期労働者(派遣労働者)の採用と仕事の負担は増加するものの、残業が増えない体制をとる必要があり、このことは正規労働者の仕事の密度があがる要因となり、体調に影響が出ることが心配されます。これに関連して勤務間インターバルの改善も難しくなってきています。

また、コロナ感染予防のため会社に出勤しなくてもよいテレワークが導入され、仕事内容は一定の枠の範囲に縮小、その成果を会社へ送信するジョブ型に似た体制となったことから、労働時間管理が困難になっています。これにより「年次有給休暇の確実な取得」という改革もその必要性がなくなることが危惧されます。

また、コロナ不況のため余剰人員となった正規労働者が外部企業へ出向する状況となっています。ポストコロナになっても出向社員の元の職場への復帰がスムーズに行われることが困難となり、復帰後の問題が発生していることが心配されます。

このような現状においても、産業保健に関係する担当者は専門的知見を現場に活かして、企業活動が健全、円滑に継続できるように活動することが必要です。あくまでも医療的、人道的にかつ労働者の生活を支援することが産業保健には求められています。

労働安全衛生法など労働法については、経営側として実行上難しい内容も含まれています。これにより摩擦がおこることもありますが、労働者の安全と健康を確保するという主旨をまげることなく、事業体全体で産業保健の理解を深め、発展させることが労働者福祉につながります。当センターは労働者が健全に活動できるように支援を行っています。有効に活用して下さることを願っています。