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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和4年5月によせて 

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

新入社の皆様、お仕事に慣れましたでしょうか。

4月に入社の人は1カ月が経過し、今実施している作業が、自分が入社前に考えていた作業内容とほぼ一致している場合は良いのですが、“何か違うな”と感じている人がいませんか。また、自分で採用前に考えを持ち、仕事のイメージを持っていたのに、その仕事内容と異なると思っている人はいませんか。

このような状況にある場合は、これを放置したまま勤務を継続していると、「この仕事を続けてよいのか」とか「この仕事は出来ない」と考えるようになることがあります。このままだと気が付かないうちにメンタルヘルス不調に陥り、場合によっては退職に繋がることもあります。このような状態を「五月病(スチューデント・アパシー)」といいます。これは、精神・身体的にはどこにも異常を自覚しないのに、特有な無気力状態となり、情緒的なひきこもり、競争心の欠如、社会的活動ができない現象が現れます。

これらの状況は、日常優秀で、真面目で、内気であり、完璧主義を求める人に現れやすいと言われています。時々、新年度になり、昇進し上司となった人に五月病が発生すると、部下にきつくあたったりして、部下や周囲の人が困惑します。また、新入社員が五月病に陥ると、周囲の人とのコミュニケーションが取れなくなって、精神的におかしいのではないかと誤解されるようなことが起こります。

また、近年、日本の産業構造や経済社会が急速に変化したことや、国民一人ひとりの労働についての考え方や就業意識(終身雇用制ではなく、有期契約による就業条件を好む人が現れている。)などが変化し、昭和22年施行以来の「労働基準法」を基準とした労働条件では対応できなくなっています。

その上、「働き方改革」の普及により、ダイバーシティ(仕事に従事する場合に資格や経験などを考慮して受け入れ、幅広く活動できるようにする。)の推進による対応の不慣れや、有給休暇や育児休暇を積極的に取得するように勧めることにより勤務体制の改善がなされないまま、対応不十分による混乱などが起こっています。

また、ある調査によると労働者の多くが仕事や職業生活に関することで「強い不安、悩み、ストレスがある。」などを訴える結果が報告されています。

労働者のメンタルヘルス不調は、職場の生産性に大きく影響を与えるだけでなく、労働者の生活全般に支障をきたすことを考慮し、その対策の一環として、平成27年よりストレスチェック制度が導入されています。この内容は、労働者個人の現在のストレス状態や職場全体のストレス要因を推測するため「仕事のストレス要因」「心身のストレス要因」「周囲のサポート・満足度」を自己記入方式で調査します。ストレスに個人が気付くことを促し、まずセルフケア、そして産業医などの面接指導により、メンタルヘルス不調の改善に役立てるとともに、集団分析を活用して、職場環境改善を目指します。これらのメンタルヘルス対策の制度を積極的に活用して、五月病の予防のみならず、快適な職場環境づくりに努めましょう。