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鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

『新型やくも』

ゴールデンウイーク中の移動に車ではなく新型特急やくもを利用した。振り子電車の
特急やくもが苦手なのだが、昨年デビューした新型やくもの評判がよかったので利用す
ることになった。新型やくもに採用された最新技術の「車上型の制御付自然振り子方式」
により乗り心地が格段に向上したといわれる。以前の「自然振り子式」だと、カーブに
入って遠心力が働いてから揺れるため、揺れが遅れて生じ、急に大きく揺れる。また、
直線でも高速になると細かな揺れが生じやすいといわれる。最新の「車上型の制御付自
然振り子方式」では先頭車に搭載したジャイロセンサが走行位置を正確に把握し、曲線
の入口にあわせて車体を傾斜させるなど揺れを精密に制御しているという。

以前の特急やくもには車内販売があった。カニのお弁当、アルコール類やつまみなど
が売られて活況を呈していた。一方で、揺れの中、販売車を押しながらの販売員の移動
は見るからに大変そうだった。このような交通機関従事者の作業関連疾患として、全身
振動による障害が知られている。全身振動による障害では、短期的にはめまい、頭痛、
気分不快などの自律神経症状がみられるが、長期的には、腰痛などの筋骨格系障害、循
環器系、消化器系、泌尿器系の障害が問題となる。振り子電車の車内販売員の身体的負
担は産業保健分野の課題となっていたようで、特急やくもの車内販売員の健康調査が行
われていたと記憶している。そのやくも号の車内販売は2009年9月に廃止されたようだ。
乗客の減少等による売り上げの減少が主要因であろうが、販売員の負担も一要因であっ
たのだろう。

苦手とは言いながら、新幹線に接続する特急やくもはよく利用した。ただ、利用時は
体調を万全にしておく必要があった。車内では、水分以外の食べ物は摂取しないように
し、もちろん読書も控え、できるかぎり眠るようにしていた。特急やくも利用時のルー
ティーンである。このルーティーンをしないとたいてい気分が悪くなった。今回、行き
の新型やくもでは、大きな揺れをほとんど感じることはなかった。そこで、帰りの新型
やくも号では飲食を試してみた。おにぎり2個を食べたが、気分よく過ごせた。次は読書
を試してみようと思う。

 

 

 

 

 

 


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鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

『米国の完全措置』

4月にはいって、世界中が米国の関税措置の対応に振り回されている。関税措置の
日本への影響についてあるエコノミストは、輸出産業からその下請け企業に生産調整
や雇用調整の影響が広がる可能性があるとコメントしていた。さらに、各国が報復措
置に踏み切り、貿易戦争のような状況になった場合は、リーマン・ショック以来の大
きな減速期を迎えるきっかけになる可能性にも言及した。リーマン・ショックと聞い
て、17年前の記憶がよみがえった。リーマン・ブラザースの経営破綻が露呈した2008
年9月、ある企業の安全衛生委員会への出席を準備していた時、その企業から安全衛生
会議延期の連絡が入った。リーマン・ショックに対応するための会議が急遽開かれる
ことになったためだという。ただ事ではない緊張感が伝わってきた。生産計画の見直
しなどが話し合われたのだろう。その影響は長期間続いたと聞いている。
全国の製造業の製造品出荷額等の推移(「経済センサス-活動調査」)をみてみると、
2007年の336兆円からリーマン・ショック後の2009年には265兆円と大きく落ち込ん
でいる。経済の減速期を迎えたのだろう。その後、製造業の製造品出荷額は徐々に回
復し、最近では、360兆円となり、リーマン・ショック前よりも増加している。あの時
のような影響が出なければよいのだが・・。

4月9日になると、米国から「相互関税」の90日間の停止が発表された。その後、
「相互関税」の対象からスマートフォン、パソコンや半導体製造装置などを除外する
ことが報道された。米国の関税措置に変化がみられる。ただ、一喜一憂しても仕方が
ない。17日には、いわゆる日米交渉がはじまると報道されている。固唾をのんで見守
るしかない。

 

 

 

 


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鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

『温室効果ガス削減』

温室効果ガス世界資料センターによると2023年の大気中の二酸化炭素の世界平均濃度は、
前年と比べて2.3ppm(0.00023%)増えて420ppm(0.042%)となっている。産業革命以
前の値と推定される約280ppm(0.028%)と比べて、1.5倍に増加している。大気中の二酸
化炭素などの「温室効果ガス」は、地球の表面から逃げようとする赤外線(780~10万nm
の波長域の光で熱作用を有する)を吸収し、さらに赤外線を放出したりする。放出された
赤外線の一部は地表面に戻ってくるので、温室効果ガスには地表面付近をあたためる効果
があるとされる。プリンストン大学の真鍋淑郎博士は1960年代からこのような温室効果ガ
スの物理的作用と気象要因を考慮したシンプルなモデル(気候モデル)を作成して地球の
気温を計算した。試みに大気中の二酸化炭素濃度が当時の0.035%から2倍に増えるとどう
なるか計算したところ、地表付近の温度が2℃程度上がるという結果を得た。これが、地球
温暖化に関する研究の始まりと考えられている。真鍋淑郎博士は、2021年に気候モデルの
業績でノーベル物理学賞を受賞された。

公害などの環境問題に苦しんだ歴史のある日本は、京都議定書の策定に尽力するなど地球
温暖化対策に意欲的に取り組んできた。京都議定書とは、1997年12月に定められた気候変動
への国際的な条約である。先進国の排出する温室効果ガスの削減について、法的拘束力を持
つ数値目標が設定された。京都議定書の後継である「パリ協定」では先進国・途上国関係な
くすべての締約国が対象となって温室効果ガスの削減目標を示すことになっている。今年の
1月、温室効果ガスの排出量が世界第2位のアメリカで、「パリ協定」から離脱する大統領
令が出された。「パリ協定」がアメリカ経済に悪影響を与え、不公平な負担であることを理
由に挙げている。これに対応して国連事務総長は「アメリカ国内の都市や州、企業が他の国
々とともに、低炭素で強じんな経済成長に取り組み、引き続きビジョンとリーダーシップを
発揮することを確信している。」とコメントしている。

日本は新たな温室効果ガスの排出削減目標を「2035年度に2013年度比60%減、2040年度
に同73%減」に決め国連に報告した。ただ、産業革命からの気温上昇を1.5℃以内に抑える
「パリ協定」の水準(日本では2013年度比66%に相当するとされる)を下回ることになる
ので、日本の姿勢に批判があることは知っていたほうがよいだろう。

 

 


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鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

『冬の転倒災害』

冬の山陰は、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故だけでなく、積雪や凍結に
起因する労働災害(転倒災害)も問題となる。厚生労働省・鳥取労働局によると、
毎年、鳥取・島根両県で数十件の積雪や凍結に起因する転倒災害が発生している。
そのため鳥取労働局は、「冬季のstop!転倒災害」を提唱している。その内容は、
事業所での転倒防止対策として凍結危険箇所の把握、凍結危険箇所の⾒える化、
通勤・帰宅への配慮、転倒防止マットの設置、危険箇所の凍結防止、4S(整理・
整頓・清掃・清潔)の徹底などである。転びにくい歩き方として、滑りにくい靴を
はく、小さな歩幅でゆっくり歩く、両手はポケットに入れないことなども紹介し
ている。

転倒は、移動中に発生することが多く、駐車場から職場への通路での転倒災害
が頻繁にみられる。転倒災害の防止の観点から、駐車場から職場につづく通路の
除雪や凍結防止は必須の対策であろう。また、高年齢労働者は、転びやすく骨折
しやすいので注意が必要である。積雪や凍結に起因する転倒災害の8割が50歳以
上の高年齢労働者である。厚生労働省のエイジフレンドリーガイドラインにある
ように、高年齢労働者の身体的状況に応じた適正配置、環境整備、転倒予防体操
などの対策が重要となる。

 

※参考:エイジフリーガイドライン
    (高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)
◇◇◇◇ ◇https://www.mhlw.go.jp/content/001107783.pdf(R5.10)


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鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一

 

『雪下ろしと地方創生』

 

2025年は、仕事始めから今シーズン最強の寒波により、日本海側を中心に大雪となった。
屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故が連日報道された。青森県は10日に大雪被害として、
死亡者7人を含む死傷者は102人に達したと報告した。これまでも豪雪地帯では、屋根の雪下
ろしなどの除雪作業中の事故が多く発生し、雪が多い年には、年間1000件以上の事故が発生
し、100人以上が亡くなるなど深刻な被害となっている。国土交通省は、除雪作業中の屋根か
らの転落事故のほか、転倒、除雪機による事故、落雪による事故、水路等への転落事故など
の防止のための注意事項を「雪下ろし安全10箇条」として取りまとめている。
第1条では、「安全な装置で行う」として、安全帯としてフルハーネスを使用し、命綱はアン
カー(ない場合には屋根の雪を下す反対側の柱、固定物)にしっかり固定とある。屋根の雪
下ろし作業は命がけの重労働である。

近年の傾向として、人口減少・高齢化により雪処理の担い手が不足し、高齢者を中心とし
た除雪作業中の事故が多く発生している。豪雪地帯の安全・安心な暮らしの確保を図る必要
があるとして、国土交通省は、地域における共助除排雪体制づくりを推進している。ただ、
限界集落といわれるように集落の共同活動の機能が低下しており、共助体制を維持するのは
容易ではない。やはり、人口減や社会的な基盤の維持など地方が抱える課題の解消をめざす
地方創生といった観点が必要なのだろう。政府の看板政策である地方創生に期待したい。

※参考(国土交通省 「雪下ろし安全10箇条」)
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000139.html