平成15年度調査研究報告(抄録)

鳥取県における産業保健活動の実態

主任研究者 鳥取産業保健推進センター 所 長 長田 昭夫
共同研究者 鳥取産業保健推進センター 相談員 芦村 浩 
鳥取産業保健推進センター 相談員 井上 雅勝
鳥取産業保健推進センター 相談員 松浦 喜房

Ⅰ.はじめに

 鳥取産業保健推進センターは平成15年6月に開所した。本調査は、鳥取県内の産業医及び事業場の産業保健活動に関する実態を把握し、本センターの今後の活動、事業のあり方について検討するための基礎資料として活用することを目的に実施した。

Ⅱ.対象と方法

 鳥取県内の産業医及び事業場を対象に、質問調査票を郵送し、期日までに調査機関に直接返送する方式により実施した。産業医を対象とした調査では、調査対象産業医339名のうち、回答のあった133名について集計した(回収率39.2%)。また、事業場を対象とした調査では、調査対象481事業場のうち、回答のあった234事業場について集計した(回答率48.6%)。

Ⅲ.調査の結果

1.産業医活動に関する調査結果

①産業医活動の現状
 産業医活動の現状について、「十分な活動を行えている」と答えた産業医は10.9%にすぎず、61.4%の産業医は「十分な活動を行えていない」と答えている。産業医活動を阻害する要因については、32.7%の医師が「ある」と答えており、その理由として、「時間的な余裕がない」という産業医自身の要因、「従業員の関心が低い」という事業場側の要因をあげている。
 産業医が産業保健に費やす一事業場あたり月平均時間は、1時間未満が46.5%、1~4時間が39.6%であり、5時間以上は7.9%にすぎなかった。これは実質的な産業医活動ができていないことを示唆しており、産業医自身も認識している。
 現在重点的に実施している業務内容は、「健康診断後の事後措置」が86.1%、「健康相談」が50.5%と回答があったが、その他「職場巡視」「メンタルヘルス」「作業環境等の改善」等の業務を実施している医師は非常に少なく、10%に満たなかった。これは事業規模を問わず同じ傾向がみられた。
②産業医活動の課題
 今後重点的に実施したい業務内容は、「健康診断の事後措置」と答えた医師は51.5%であった。とくに100~299人の事業場の医師にその傾向が強い。300人以上の事業場の医師は、「快適職場づくり」「メンタルヘルス」をあげており、現在行っている業務内容を上回る内容である。
 また、産業保健活動の課題として、「生活習慣病」をあげる医師が55.4%と多く、とくに300人未満の事業場の医師に回答が多かった。一方300人以上の事業場では「メンタルヘルス」を課題としている医師が多かった。

2.事業場の産業保健活動に関する調査結果

①産業保健活動の現状
 事業場が現在重点的に実施している業務内容は、全体では「健康診断の事後措置」が58.1%と多かった。100人未満の事業場では「健康診断の事後措置」が上位で、「作業環境改善」、「快適職場づくり」の順になっており、100~299人の事業場では「健康診断の事後措置」が上位で、「快適職場づくり」、「健康相談」の順となっている。また、300人以上の事業場では「快適職場づくり」が上位にあがり、「健康診断の事後措置」、「健康・衛生教育」、「メンタルヘルス」の順となっている。事業規模によって、重点的に実施している業務内容に特徴がある。
 「健康診断の事後措置」に関連した実施については、「結果についての通知」が85%ともっとも高く、「保健指導」、「診断結果について医師又は歯科医師の意見を聞く」と続く。「特に実施していない」と答えた事業場は0.4%と低率であった。
 従業員の健康管理に対する事業場の考えは、「会社経営の根幹と位置づけている」が65%と圧倒的に高かった一方、「法律で義務付けられているから」という認識の事業場も23.1%あった。
 なお、産業保健活動を進めていく上での問題点は、「従業員の関心の低さ」が事業場の規模を問わず回答が多かった。100人未満の事業場では、次いで「経営上十分な活動を行う余裕がない」をあげており、100人~299人の事業場では「担当する職員の研修不足」を、300人以上の事業場では「担当職員の研修不足」、「産業保健の人材」を問題点にあげている。また、「産業医が忙しい」、「産業医から適切な助言が得られない」という、産業医に対する問題点を指摘する事業場もある。
②産業保健活動の課題
 今後重点的に実施したい業務内容は、「健康診断の事後措置」をあげる事業場が43.6%あり、300人未満の事業場にその傾向が強い。300人以上の事業場では「メンタルヘルス」をあげる事業場が多かった。
 産業医に重点的に実施してほしい業務内容は、「健康診断の事後措置」が54.7%と最も多く、100人未満の事業場が強く求めている。次いで「健康相談」、「健康・衛生教育」と続く。
 労働衛生上の課題は、「生活習慣病」が42.3%、「快適職場づくり」が32.9%、「腰痛等の作業態様による健康障害」が29.9%と多い。300人以上の事業場では「メンタルヘルス」を課題としてあげる事業場も多かった。

Ⅳ.考察

 産業保健活動において、現在重点的に実施している業務内容は、産業医、事業場ともに「健康診断の事後措置」を中心とする「健康管理」の取り組みが多かった。しかし「快適職場づくり」、「作業環境等の改善」、「メンタルヘルス」等の項目については、事業場に比べ産業医の回答は非常に少ない。産業保健活動に産業医が関わっている事業場が少ないことを示唆すると思われる。また、産業医の時間的余裕のなさ、事業場全体の産業保健に対する関心の低さという阻害要因が産業医・事業場の共通の問題点である。産業保健活動の阻害要因には、「産業医側の要因」と「事業場側の要因」があるが、この改善が今後の課題とされる。
  今後重点的に実施したい業務内容は、産業医、事業場ともに「健康診断の事後措置」の回答が上位であった。その他の業務内容についても、産業医と事業場の希望と一致する。産業保健活動の課題は、産業医、事業場ともに「生活習慣病」を上位にあげている。300人以上の事業場では他に「快適職場づくり」、「メンタルヘルス」を今後の課題とする回答も多く、産業医も同様の結果であった。とくに300人未満の事業場にみられるように、「健康診断後の事後措置」以外の取り組みに重点がおかれていないこと、今後の課題にも取り上げる産業医・事業場が少ないことは、現状にある前述の産業保健活動の阻害要因が背景にあることが推測される。
 今後、産業保健活動を充実させるためには、産業医・事業場ともに、産業保健に対する意識の向上をはかるべく自助努力が必要とされるが、とくに産業医の積極的な産業保健活動の関与が不可欠とされる。産業保健推進センターにおいても、事業主への理解促進をはかるとともに、産業医に対するサポート拡大の必要性を痛感するものである。また、産業保健関係者に対する啓蒙活動と同時に産業保健関連の情報提供、専門家の派遣、研修会の開催等、さらに充実した活動が課題とされる。


*この調査研究報告書をご希望の方は、当センターへお問い合わせください(TEL0857-25-3431)。